「terra’s Black Marker 2」2015年Hidari Zingaroで寺田克也個展

今回は2015年に開催された寺田克也さんの個展「terra’s Black Marker 2」について書いてみます。

2021年9月4日より新しく個展「Monster Head Girl」が開催されるのですが、その会場であるHidari Zingaroで寺田さんが個展をやるのはこれが2回目。その1回目である個展についてググってみると、公式サイトのページが消えていたり、ほとんどどんな個展だったかを振り返ることができなかったので、じゃあ俺が書いておこう!と思い立った訳です。その前身である2011年のポートランドでの展示についても軽く触れています。

「terra’s Black Marker 2」概要

terra’s black marker2のフライヤー

terra’s Black Marker 2

  • 会場:Hidari Zingaro(中野ブロードウェイ3階)東京都中野区
  • 会期:2015年8月29日(土) ~2015年9月15日(火)
  • オープニングレセプション:2015年8月29日(土)18:00~20:00

※公式サイトの詳細ページは消えていたので、アーカイブのリンクを貼っておきます。

https://web.archive.org/web/20200201070657/http://hidari-zingaro.jp/2015/08/teradaexhibition/

作品公開制作

  • 日程:2015年9月3日、4日、7日、8日、11日、12日、13日
  • 時間:12時頃から時間不定期

ライブドローイングイベント

  • 日程:2015年9月5日、6日
  • 時間:13:00~17:00(ライブ動画配信もあり)

ティザー動画

インタビュー動画

 

※以下、インタビュー動画の書き起こしです。

Q.今回の展示のテーマを教えてください。

マーカーを使って絵を描くというテーマになっております。
以前、アメリカのポートランドで初めてと言っていいぐらいの個展をやった時に「BLACK MARKER(ブラックマーカー)」というタイトルで、マーカーを使って水彩紙の全紙サイズでとにかく線を引くという作業をした時に意外と面白かったな、というのがありまして、マーカーで線を引くっていうのが今回のテーマで、その中で何が描けるかっていう所をちょっと詰めてみました。

Q.今回の展示の見所を教えてください。

見所は、線の量ですかね!
マーカーの線っていうのは、結局フラットで。ただ無自覚で無意識に引いてしまうと全部わりとだらしない線になってしまって、入りも抜きもないみたいな。線に表情はないんですけど、そこをコントロールするっていうのが、自分にとっては面白いチャレンジで
線の表情であるとか、そこに生まれるキャラクターであるとか、そのキャラクターを見て、見てくれた人がそれぞれストーリーなり、背景を想像してもらえたりすると楽しいかな。
漫画を読むような感じで、1枚の絵を追っかけてもらうと言ってる意味が分かるのかもしれないですね。

Q.最後に、観客の方へ一言お願いします。

さっきとちょっと重なりますけど、漫画を読むような感じで絵を見るっていうのが最近自分の中でわりと腑に落ちる説明になってきたな、と思っていて。その中にいるキャラクターもそうですけど、線自体にキャラクターがあるようなものを今、目指しています
その線がどういう風に変化していくのか、そこを追っかけて行くと、追っかけていくっていうことは、つまり、そこに時間軸が生まれていくので、その1枚の大きい絵の中を目線で移動するうちに、その時間軸が生まれて、ストーリーが生まれていくんじゃないかなっていう気がちょっとしているんですけども。
それが成功しているか、していないのかはともかく、そういうものを念頭に置いて描いてますよ、っていうことを思いつつ、見ていただくとちょっと面白いのかなっていう気はします。
大きい絵を見る時の面白さっていうのは、意外とそういうことなのかなとは思いますし、ディティールを楽しんでいただければと思います。

「terra’s Black Marker 2」展示風景

私が当時撮影した写真です。

大型の作品展示になっており、どれもマッキーで描かれた「線」主体の絵。最近は個展の頻度も多くなりましたが、この頃はまだどちらかというと個展やり始めの時期だったように思います。単純に大きい絵がずらっと並んでいるので、迫力がありました。会場は広くないですが、それだけに密度が凄かった。

展示作品1

展示作品9

展示作品8

展示作品7

展示作品6

展示作品5

展示作品4

展示作品3

展示作品2

 

こんな感じで、使用された紙用マッキーの展示もありました。普段見慣れたあの「マッキー」は油性マーカーですが、寺田さんがこうして使用しているのは水性顔料インクの「紙用マッキー」。油性のものに比べて裏写りしにくいらしいです。多分経年劣化しづらいとかそういう特性もあったようななかったような。(自信なし)

紙用マッキーの展示

海外のサイトですがこの展示について紹介しているものがあったのでリンク貼っておきます。

 

展示コンセプト

絵を描く開放感「GEISAI∞infinity」プロジェクト

アート好きな人ならご存じと思いますが、この会場Hidari Zingaro(ヒダリ・ジンガロ)というギャラリーは現代美術家、村上隆さんがオーナーを務めるギャラリーなんですね。2010年4月から、若手アーティストを中心とした展覧会を開催しているそうです。ギャラリー名の由来は、江戸初期に存在したと言われる伝説の彫刻師「左甚五郎」からとったそうな。由来がカッコいい。

で、この村上隆さんが主催するアートイベントが「GEISAI」(ゲイサイ)で、このGEISAIが第20回を区切りにして新しい取り組みを始めたというのが「GEISAI∞infinity」らしいです。これは「現代美術的な文脈から解放された、絵を描く開放感を主軸とした展覧会のシリーズ」ということで、まさにラクガキング・寺田克也さんにふさわしいテーマですね。

この「GEISAI∞infinity」の2015年下期のシーズン中で、寺田さんのほかにGhetto Farceurさん、Mr.さん、James Jeanさんの展示も行われました。「世界中からグラフィティ&ストリートアーティスト、もしくはアクロス・ザ・ボーダーなクリエーターを招聘」するというだけあって、まさに絵を描く開放感を感じるようなラインナップ。

マーカーでのドローイングと展示について

こうして線を主体にしたドローイングをすることと、展示をすることになった経緯や心境については、寺田さん自身がnoteに綴っています。このterra’s black marker2に関してではないですが、ロサンゼルスのGR2 Galleryでの展示や、このterra’s black marker2の前身である、ポートランドでの個展「terra’s Black Marker」についても触れられています。

  1. ジャイアントロボットギャラリーで
  2. ジャイアントロボット2ギャラリーで。その2
  3. ジャイアントロボット2ギャラリーで、その3
  4. ジャイアントロボット2ギャラリーで、その4

ざっくりいうと、阿佐ヶ谷美術専門学校卒業生グループ展で、マーカーの絵を出したのがこの作風の始まり。アメリカ合衆国オレゴン州、ポートランドにあるコンパウンドギャラリーのオーナー、カツ・タナカさんに誘われ2011年に開いた個展が「terra’s Black Marker」で、そこでマーカーでの連作が生まれたということです。「2」の方にもこちらの絵のプリントが展示されていました。

 

2011年の個展「terra’s Black Marker」

ここまで2015年のHidari Zingaroでの個展「terra’s Black Marker 2」について書いてきましたが、ここからは2011年の個展「terra’s Black Marker」についてちょっと書き残しておきます。

コンパウンドギャラリー

ポートランドにあるコンパウンドギャラリー(Compound Gallery)と寺田さんがどのようなご縁でつながったのかは存じませんが、オーナーさんが日本人のようですね。

地図を貼ったからなんだという感じですがGoogleマップ貼っておきます。なんとなく。

ポートランド日本庭園なるものも近くにあるようで、アメリカ国内でも比較的治安がよく、親日なアメリカ人も多く住む地域のよう。道が碁盤の目のようになってるのは、比較的新しい街だからなのかな。知らんけど。

オーナーのカツ・タナカさんは現地で様々な取り組みをしておられる方のようで、インタビュー記事もありました。COVID-19やBlack Lives matterの影響を受け、今は町に痛々しい傷跡も残っているようです。早くこういった危機を乗り越えて平和になってほしいものです。

「terra’s Black Marker」展示内容

2011年の展示がどんなものだったかは私も知らないのですが、当時の様子が分かる記事として、「Art Eater」という海外のカルチャー系Webメディアの記事が残っていました。あともう一つ、会場風景が分かる海外のブログ記事?もありました。

ポートランド個展風景

Art Eaterの記事から一枚だけ引用させてもらいますが、こんな感じで額を飛び越えて壁にまでゴリゴリと描かれたドローイングが展示されていました。私は寺田さんの国内の個展は大体見に行ってますが、この展示だけは生で見たかった。当時私は大学生なので海外に飛ぶ時間と体力はあったはず。

これらの連作は「Spiral」という題で、渦を巻くように線を引いているのが特徴です。画集『寺田克也ココ10年』にも収録されています。寺田さんの線画はこのシリーズで一つの極致に辿り着いているなと前から思ってます。これらの絵は壁ごとまとめてお買い上げされたらしいです。金持ちになりたい。

 


と、いうことでまとまりなく書いてきましたが以上が寺田さんの個展「terra’s Black Marker2」と「terra’s Black Marker」に関する記録でした。これだけおさらいしておけば、2021年9月からの展示「Monster Head Girl」も万全の態勢で鑑賞できますね。

「Monster Head Girl」はこういった流れを持った展示である、ということを言いたかったのですが、次回の展示はブロンズの立体作品も出品されるとのことですので、2015年の展示からの時間経過とともに寺田さんの中で蓄積された経験や、意匠の変化が観られるのではないかと思います。ちょうたのしみ!