一年で最も気持ちの良い気候、それがこの季節だと信じて疑いません。今回は京都出町柳のギャラリー・トランスポップギャラリーにて開催中の「カイカイジュウジン/怪怪獣人展」をご紹介しますよ。
「カイカイジュウジン/怪怪獣人展」概要
カイカイジュウジン/怪怪獣人展
開催日程:2024年10月12日(土)〜11月3日(日)※月火定休
営業時間:12:00〜18:00
会場:トランスポップギャラリー
〒606-8203 京都府京都市左京区田中関田町22-75
トランスポップギャラリーでは寺田克也さんは過去に何度か個展をやっておりますね。それ以外にも合同展示も参加されているはず。大体2,3年おきに個展をやってるので、ぼちぼち「おなじみ」のギャラリーになってきたなと思います。
このブログで紹介したのは以下の展示。
>「ゲイリーザキャット」京都トランスポップギャラリーで寺田克也個展
>「寺田爺-寺田克也のおじいちゃん展」が京都トランスポップギャラリーで開催
展示内容
今回の展示は寺田克也さんと逆柱いみりさんの2人展ということで、展示スペースを半分ずつ使っているような展示です。寺田さんの原画は9点、逆柱さんのは13か14点くらい?です。※ぱっと見で数えたものなので若干違うかも!
このほか、立体、Tシャツ、トートバッグ、シルクスクリーンなど。
寺田克也さんの展示・キャンバス原画
キャンバスにいつもの紙用マッキー(と思われる)で描かれた原画が中心です。
上の絵は「美女とモンスターと南極」。下の絵は無題なのかな?背景だけバケツツールのようにパキッと塗られた線画ですが、どことなくレトロな特撮を思わせる雰囲気があります。
右から、「邪教サイバーパンク」と「スペースオペラ宇宙生物」。宇宙戦争や円谷プロ的(成田亨)なエッセンスを感じます。全体的に擬音の描き文字が入っていますが、漫画っぽいというのか、絵の背景に溶け込んでグラフィカルな効果を感じます。
上のが寺田さん、下が逆柱さん。ギギョ、とすんごい目つきしてますが、左右で生え方の異なる牙や背景の炎の感じは不動明王のエッセンスかな。本展の寺田さんの作品制作は京都で泊まり込んでやってるそうで、京都の町が持つ空気が創作にも反映されているのかな、と思ったりします。
一方の逆柱さんの絵は、どこにルーツがあるのか分からない…。私は世代が違うためか逆柱さんのことは存じ上げなかったのですが、ちょっとホラーやコメディも入ってるような。
モワーっとしてるのが「夢と発明」、オレンジ色のが「火星円盤」。ハヤカワ文庫的なレトロSF感?やゴジラっぽさも漂ってきます。展覧会タイトルが「怪怪獣人」ということですが、妖怪、怪獣、怪人をテーマにしているようで、(いい意味で)訳の分からん子供の絵のような無邪気さと、未来や宇宙への妄想が散りばめられたような絵になっているなと思いました。
シルクスクリーンプリント・ポスター
シルクスクリーンの販売もあり、寺田さんのは1枚4,000円。逆柱さんのは1枚4,500円です。
画像が荒くて見づらいと思いますが、以前トランスポップギャラリーで個展をやったゲイリーザキャットも映り込んでいますね。右上の怪人は、頭部が異形で首から下はスーツっぽい、ライダー怪人感もあります。胴で線が入っているので、ソフビ怪人かな。子供の頃におもちゃで遊んだ手触り感と、樹脂の摩擦感などを連想しました。
逆柱いみりさんの原画
逆柱さんの原画は、実はまだ会期中に増える予定だそうです。この下にある絵が「火星円盤」と題されており、実はこの同じ一つのタイトルに沿って2人が別の絵を描く、という試みがあるのだそうな。こうして見ると、同じ「火星人」っぽいクラゲ風のモチーフは共通しているものの、驚くほどに表現は異なるという。
逆柱いみりさんはガロでデビューした漫画家で、寺田さんとは同世代の方ですが、寺田さんが以前から逆柱さんのファンだったそうで、トランスポップでは昔から逆柱さんの絵を扱っていたこともあり、寺田さんがぜひ一緒に展示をやりたいと要望して本展の開催に繋がったそうな。寺田さんの絵は、メビウスにはじまり色々な影響を受けているルーツをご本人も仰ってますが、片や逆柱さんの絵はそういう表現の系譜が分からない、オンリーワンの作風だなあと思いました。いや勿論色々な影響があっての作風なのでしょうが、一眼見ても分からないなというのが、個人的な感想です。Wikipediaによれば『ねじ式』に感銘を受けたとあるので、ガロ周辺のナンセンス漫画がルーツということなんですかね。
逆柱いみりさんの立体造形
この辺は逆柱さんの立体。樹脂粘土って言ってたかな…?うろ覚え。実際の墨壺(スミツボ)の上から粘土で造形しているとのこと。これに限らず展示されている原画の方も、よく見ると随所に墨壺怪獣が描かれてるんですが…何でスミツボ???
私はこれまで知らなかったんですが、墨壺というのは大工さんが建築現場で直線を引いたりする時に使う工具で、糸車の部分から糸を引くと壺に入っている墨がついて、その糸をピンと張って弾くと、木材に直線を引けるというもの。何でこれを題材にしたんだろう…
その他グッズ
そのほかにはソフビ、Tシャツ、トートバッグ。
これは「寺田器」シリーズ新作ですね。波佐見焼の六寸絵皿です。各7,600円。
と、こんな感じの展示でした。私が訪れたのは10月19日で、会期も一週間経過したところですが、逆柱さんの絵がまだ増えそうなので、ギャラリーや作家からの告知を要チェックですよ。