「バロン吉元/寺田克也 バッテラ」展@高台寺【展覧会レビュー】

2018年3月9日より高台寺(京都)にて開催中の「バロン吉元/寺田克也 バッテラ」展、行って来ました。
※今回の記事は長めです。
※会場内撮影可

春の特別展「バロン吉元/寺田克也 バッテラ展」

  • 期間:2018年3月9日(金)~5月6日(日)
  • 場所:高台寺 方丈・北書院
  • 拝観時間:9:00~22:00(21:30受付終了)
  • 料金:無料 ※通常の拝観料(大人600円)に含みます

展覧会公式ページ

 

概要

2017年3月に渋谷のギャラリー・アツコバルーにて開催された、バロン吉元さんと寺田克也さんの二人展「バッテラ」の京都巡回展です。

(前回のバッテラ展)

会期前公開制作

会期直前に、バロン吉元さん寺田克也さん御二方による公開制作があったことも、今回は話題を呼びました。

バロン吉元さんの公式Twitterアカウントで、一連の公開制作の様子をうかがうことができます。(動画もあり)

※以下のツイートの詳細ページにぶら下がっている投稿を追うと、会期直前までの様子が続けて見られます。

※Youtubeに、公開制作の様子を撮影した動画がアップされてました。

 

レビュー

展覧会の見どころ

本展の見どころはなんといっても襖絵。
高さ1.8m、幅1.4mの襖×2枚を2人で描くので、計4枚。幅5.6mの迫力ある作品です。
今回はバロン吉元さん、寺田克也さんそれぞれに龍をモチーフにした絵を描かれています。
方丈(本堂)の枯山水式の庭園を前にして、大きな襖に描かれた一対の龍図を鑑賞するという…。
当日は天気もよく、会場は開放的な空間でしたが、仏閣独特の静謐な空気に包まれていました。

寺田克也さんの絵

襖絵

目玉となる襖絵は、マーカー(恐らく紙用マッキーでしょうか)一本で描かれた龍の絵です。
一見して連想するのは曾我蕭白の雲龍図。ですが、バロンさんが描いた龍の絵と対になっているのが今回のポイントです。
その視点で改めて絵を観ると、連想されるのは建仁寺の天井画(双龍図)
龍と対になるのって、虎じゃないの?とも思いましたが、高台寺は臨済宗建仁寺派というくらいで、建仁寺に従属するお寺なんですね。
バロンさんの龍も寺田さんの龍も、建仁寺天井画のように炎を吐いています(?)し、恐らく双龍図へのオマージュなのだろうなと感じました。(個人の感想です)
いわゆる日本の伝統的な美術って、デッサンに忠実というよりも、やや誇張した描線が牙や爪、眼光をより強調しているものですが、寺田さんの絵もそうした表現をオマージュしているような気がします。(個人の感想です)

その他の作品

その他にも10点ほど、マーカーで描いたと思われる線画が展示されています。
これらは過去の展覧会で発表されていたものかと思いますが、どれも観ていて飽きません。

襖との相性が良すぎる

寺田克也さんが積極的に展覧会をされるようになった初期の頃、恐らく国内初となる個展は2013年3月に京都国際マンガミュージアムで開かれました。

この時、寺田克也さんのデジタル絵を大きくプリントアウトし、大量に集めた中古の襖に貼り付けて展示をしていたことが話題になりました。
その再発売された『寺田克也ココ10年』の画集に、和室に襖絵を当て込んだ写真が載っています。(襖のサイズが合わず、立て掛けただけのようですが)
これを目にしてからというもの、寺田さんの絵をお寺に飾って鑑賞したい…!という気持ちがずっとあったものですから、今回の高台寺というロケーションは最高に最高のやつでした。(語彙力)

これまでも襖に絵を描かれたことはありますが、本来の襖絵として機能している寺田克也さんの作品としては、今回が初となります。

写真は是非とも『寺田克也ココ10年展』を購入して見ていただきたいところですが、当時デザイナーとして関わっておられた大岡寛典さんの事務所のサイトに写真が公開されていました。

大岡寛典事務所のサイト

 

高台寺とは

今回の会場となった高台寺。一言でいうと、豊臣秀吉の死後、秀吉を弔うために妻のねねが開いたお寺。らしいです。
今回に限らず、アーティストの作品展示をやっていたり、ライトアップイベントがあったりと、色々な趣向を凝らしているお寺さんなんですね。
清水寺にも近く、観光客も立ち寄りやすいロケーションです。

高台寺公式サイト

 

バロン吉元さんについて

バロン吉元さんは、劇画ブーム全盛期を築いた劇画家の1人だそうです。現在77歳。寺田さんより約20歳も上ですが、何やら凄いバイタリティを持った方のようです。
寺田さんと知り合うきっかけは、2015年8月の中野ブロードウェイでの寺田さんの公開制作だったそうです。
出会いについて語るバロンさんと寺田さん

バロン吉元さんの絵

バロンさんが今回襖に描かれたのは、蒸気機関車と龍を組み合わせたような絵
高台寺が秀吉とねね所縁のお寺ということから、絵の中にそれらしい人物を描き込んでいたり、隕石のようなものや聖母像(???)らしきモチーフがあったりと、かなりカオスな雰囲気です。
龍は、韮沢靖さんや林田球さんを彷彿させるようなバイオレンスな形状ですが、秀吉らのモチーフが唐突に紛れ込んでくるような画面構成が、ある種本物の宗教美術のような異彩を放っています。
(歴史的な宗教画って、知らずに観ると本当にナニコレ?な場面が描かれているものが多いです。今回の絵は中世絵画を思わせるような…)
細部を見ていくと意外と荒削りな筆致なのですが、全体として観るとパンチ力を持った絵になっているのが凄い。
画材はアクリル絵具を使用しているそうです。襖絵以外にもカラーの大きな絵が10点前後展示されているので、これらをじっくり観るのも楽しいです。

バロン吉元さんと高台寺

2017年9月には、バロン吉元さんの活動20周年記念「バロン吉元 画侠展」が同じく高台寺にて開かれていました。
というのも、高台寺の執事長さんとバロン吉元さんには20年来の親交があるそうで、展覧会の実現に繋がったとのことです。

バロン吉元50周年展が京都・高台寺で開催、襖絵や掛け軸も公開 – コミックナタリー

今回のバッテラ展も、バロンさんの計らいで実現したのだと思いますが、この行動力は漫画家でなくとも、本当に見習いたいところです…!

 

メディア取材

今回のバッテラ展は、以下のようなメディアでも取り上げられています。

そのほか、京都新聞(3月3日朝刊)にも記事が載ってます。
※関西ウォーカーの記事には、お二人へのインタビュー動画も載っています!
※産経WESTの記事、そのうち直されるとは思うのですが寺田さんの年齢が誤植で29歳になっている…お若い。

 

京都と寺田克也さん

関西ウォーカーの動画でも少し触れていますが、京都は寺田さんにとって特別な場所であるそうな。

三十三間堂

寺田さんは小学生の頃から三十三間堂が大好きなそうで、色んな媒体でその旨発言されています。
三十三間堂といえば千体の観音像が有名ですが、これも圧巻の光景なので、バッテラ展目当てに京都へ行かれる方は立ち寄られることをお勧めします。
(京都駅から高台寺に向かう道中の、丁度中間辺りに三十三間堂があります)
折角なので今回は私も拝観してきました。

三十三間堂とは

国宝「千手観音坐像」や重文「千体千手観音立像」、その脇侍が迫力満点で有名です。
細長いお堂が特徴的な、京都の観光スポットの1つ。

三十三間堂公式サイト

 

京都国際マンガミュージアム

先述した通り、寺田さんの国内初個展が開かれた場所です。かなり大規模な展示でしたし、その後の精力的なライブドローイングや展覧会等の活動に繋がる、重要なターニングポイントだったのではないでしょうか。
寺田克也さんに限らず、国内外の多くの漫画について取り扱っている施設なので、こちらもお立ち寄りすることをお勧めします。

京都国際マンガミュージアム公式サイト


記事は以上です!会期は5月6日まで。

花も見頃でしょうから、是非是非、次のお休みにでも足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

2018/3/31追記

ライブドローイングイベント

ライブドローイングの宣伝チラシ

京都国際マンガミュージアムにて、バロン吉元さんと寺田克也さんによるライブドローイングイベントが行われるそうです。

バロン吉元×寺田克也:ライブドローイング

場所:京都国際マンガミュージアム 2F ギャラリー4

日時:2018年4月15日(日) 12:00 〜 16:00

料金:無料

内容:この度、京都国際マンガミュージアムでは、当代随一と海外でも名高い2人の“絵師”、バロン吉元氏と寺田克也氏をお招きし、その場で絵を描いていただく作画実演イベントを開催します。
先ごろ、高台寺(京都市東山区)にマンガ家として初めて競作の襖絵を奉納したことでも話題になった2人――「バッテラ」の創作の現場を体感していただける貴重な機会です。

https://www.kyotomm.jp/event/eve_baronxterada/

 

2018/4/17追記

イベントの様子

本イベントの様子は、京都国際マンガミュージアムのYoutubeアカウントやバロン吉元さんのTwitterアカウントで確認することができます。直接京都まで行けなかった私のようなファンにも優しい配慮…!

イベントの様子は京都新聞などでも取り上げられたようですね。

http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20180415000097

 

イベントの見どころ

寺田克也さんが筆(アクリル絵具)で、バロン吉元さんがマーカーで描き始めるという、互いの画材を交換してのスタートでした。しばらく描き進めたところでいつもの画材に戻って仕上げに入る、という流れで、会場にいた人も驚いたのではないでしょうか?

寺田さんは普段デジタルで仕事をすることが多いですが、いつでもアナログに戻れるように、デジタルに頼り切った作画はしないよう心掛けているそうです。その言葉通り、筆でもすらすらとライブドローイングできちゃうんですねえ…。

本展覧会の会期は5/6まで。要チェックですよ!

 

2018年4月18日追記(5月7日編集)

バッテラ着物

AiPというところで、バロン吉元さんと寺田克也さんのイラストをあしらった着物が制作されたそうです。

<2018.03.24>『バロン吉元/寺田克也 バッテラ着物』制作いたしました

詳しい情報は見つからないのですが、会場で実物が展示されているそうな。寺田さんのFacebookで着物の写真が公開されていたので、こちらでご紹介します。着物を着ているのは寺田さん!正面の写真が見たいところです。

京都の高台寺で展示しています。バロン吉元x寺田克也展「バッテラ」。かなりいい展示です。京都に出向くことがありましたらぜひぜひ。22時までの夜間拝観もあります。ライトアップされた高台寺の美しい庭もこれまたすばらしいです。5月6日まで。オレが着てる浴衣はバッテラ仕様のバロンx寺田コラボモノです。イカス。隣のバロンさんのは去年のバロン単独モノ。これがまた最高。http://aip-kimono.com/210-2

Terada Katsuyaさんの投稿 2018年4月16日月曜日

5月5日より、バッテラ着物の受注開始とのことです。15万円…!

着物を購入すると、バロンさん寺田さんそれぞれから描き下ろし色紙が貰えるそうです。これはスゴイ。

 

2018年5月3日追記

「画俠・バロン吉元の絵力を読み解く」

銀座にあるGINZA SIX内の蔦屋書店にて、5月2日にトークショー「画俠・バロン吉元の絵力を読み解く」が開催されました。

「画俠・バロン吉元の絵力を読み解く」イベントレビュー