222のイラストレーションが集結!「イラストレーション ウェーブ VOL.1 2018」

イラストレーションウェーブvol.1 2018

会期はもう終了していますが、 先日開催されていた展覧会「イラストレーション ウェーブ VOL.1 2018」についてご紹介します。色々自分なりに勉強したことも備忘録的に。

イラストレーション ウェーブ VOL.1 2018

日程:2018年10月27日(土)~2018年11月04日(日)
会場:3331 Arts Chiyoda 1F メインギャラリー

日本を代表するイラストレーター222人の作品が3331に大集結する。これが日本のイラストレーションだ!

<<<<< 総合ディレクション:ヒロ杉山 / 企画構成:高橋キンタロー >>>>>

公式サイト

会場は、末広町にあるアーツ千代田3331。かつての中学校を再利用した施設で、アートに限らず様々な用途に利用できるようです。学校だっただけあって会場が広いです。

宣伝動画がyoutubeに残ってました。↓

 

参加作家

なんと222人の作家が参加しています…!これだけのイラストレーターが一堂に会する展覧会はそうそうないので、かなり見ごたえのある展示でした。

この顔ぶれですが、有名イラストレーターが何人も参加しており、それもジャンルが様々。

IC4DESIGN 青山タルト 赤池佳江子 浅妻健司 浅野みどり あずみ虫 東 逸子 姉川たく 網中いづる AYUMI TAKAHASHI 新井苑子 荒井良二 新目 惠 あわい 飯田 淳 飯野和好 いざわ直子 石川えりこ 石山好宏 板垣しゅん 井筒啓之 井筒りつこ 伊藤彰剛 伊藤桂司 いとう瞳 いぬんこ 伊野孝行 今井トゥーンズ 白尾可奈子 上路ナオ子 上田三根子 上田よう ウエノ★アモーレ★ヒロスケ 宇野亞喜良 浦野周平(Shu-Thang Grafix) えつこミュウゼ 遠藤拓人 えんどうゆりこ 大高郁子 大西 洋 大森とこ 小笠原 徹  小川かなこ 小岐須雅之 奥原しんこ 音部訓子 小渕もも 海谷泰水 影山 徹 加藤裕將 金子ナンペイ 河井いづみ 川上和生 川崎真奈 河野未彩 川村 易 河村康輔 川元陽子 管野研一 管弘志 木内達朗 北澤平祐 北沢夕芸 北住ユキ 北谷しげひさ 北見 隆 北村 治 北村ケンジ 北村 人 橘田幸雄 木原未沙紀 木村晴美 国井 節 久保周史 久保誠二郎 くまあやこ 熊井 正 久村香織 黒田愛里 黒田 潔 KUNTA 近藤圭恵 サイトウマスミ 斉藤美奈子ボツフォード サイトウユウスケ 阪口笑子 坂口友佳子 さかたしげゆき 坂本奈緒 櫻井砂冬美 佐々木悟郎 笹部紀成 ささめやゆき 佐藤香苗 佐藤邦雄 佐藤昌美 sanoooo Jennykaori 七戸優 信濃八太郎 篠崎三朗 霜田あゆ美 下村 勝 JUN OSON 城芽ハヤト 白根ゆたんぽ しりあがり寿 Sui Yumeshima スージー甘金 スガミカ 須川まきこ 須田浩介 赤 勘兵衛 五月女ケイ子 空山基 高橋キンタロー 高橋 潤 竹井千佳 田尻真弓 田島征三 田代 卓 多田景子 建石修志 田名網敬一 谷口広樹 田村映二 タムラフキコ タラジロウ 丹下京子 チカツタケオ 辻 恵子 土谷尚武 都築まゆ美 tupera tupera 寺田克也 寺本愛 天明幸子 唐仁原教久 時吉あきな とどろきちづこ 戸屋ちかこ とんぼせんせい 永井博 永井もりいち 中川 学 長野 剛 ナガノホナミ 長場 雄 中村幸子 中村 隆 薙野たかひろ 西口司郎 西山寛紀 二宮由希子 野村俊夫 鴻 奈緒 長谷川慶子 長谷川洋子 秦 直也 初谷佳名子 花くまゆうさく 早川モトヒロ 樋口たつの 日端奈奈子 平井豊果 平澤一平 ヒロ杉山 廣中 薫 ヒロミチイト face 福井真一 藤井桜子 藤井紗和 藤居正彦 舟橋全二 古川タク 古谷充子 ほししんいち 堀内結 マスリラ 松井有希 松倉香子 松本孝志 真鍋太郎 真々田ことり 丸山一葉 丸山誠司 micca みずうちさとみ 水上みのり 水口理恵子 水沢そら ミック・イタヤ 南 伸坊 ミナミタエコ 峰岸達 ミヤギユカリ ミヤタチカ 村井和章 もとき理川 本 秀康 森 邦保 モリスン YASUNARI AWAZU 矢吹申彦 山口はるみ 山口マサル 山崎綾子 山下以登 やまぞえみよ 山田博之 山本重也(Shige) 山本由実 ユムラタラ 吉岡里奈 吉實 恵 Rockin’Jelly Bean 若林 夏 渡辺 宏 渡辺浮美生 渡辺リリコ わたべめぐみ

 

展覧会のテーマ

総合ディレクションのヒロ杉山さんのFacebookの投稿に、熱い想いがつづられていました。

昨日より始まった現代イラストレーションの大きな展覧会”ILLUSTRATION WAVE VOL,1 2018 ”…

ヒロ 杉山さんの投稿 2018年10月27日土曜日

昨日より始まった現代イラストレーションの大きな展覧会
”ILLUSTRATION WAVE VOL,1 2018 ” このタイトルは僕が考えました。僕は学生のとき、先輩イラストレーターの方達が作り出してきた日本のイラストレーションに大きな刺激を受けてきました。湯村輝彦さん、横尾忠則さん、安西水丸さん、河村要助さん、日比野克彦さん、伊藤桂司さん、スージー甘金さん、谷口広樹さん、、、、、本当に数えきれない方達の作り出した作品に心を動かされ、刺激を受け、もっと描きたい!もっと描きたい!と絵を描いてきました。僕が今も毎日絵を描き続けて来れたのも、若い時代に、大きな刺激を与えてくれた日本のイラストレーションがあったからだと思っています。ぼくが若い時にはそういった作品が街中に溢れていました。ポスターや雑誌、CM、、、至る所にイラストレーションが大活躍していた時代でした。まるでそれは大きな波のようでした。日本の大きなカルチャーとして世界に誇れるものだったと思います。もしあの時代にインターネットがあったとしたら、それは世界的に広がっていったと思います。
いま、またその波が、起きようとしています。その波をより多くの人に目撃してもらいたいです。

今回この展覧会に参加していただいた方は、222人です。でも、今回お声をかけれなかった作家さんがまだまだ沢山います。今気になっているイラストレーターさん、今現在、大活躍しているイラストレーターさん、これから活躍しそうなイラストレーター志望の方など、全員に今回は参加していただく事はできませんでした。そう言う方々には、VOL.2でぜひ参加してもらいたいと考えています。そしてその方々には、ぜひこのスケール感を感じ取っておいてもらいたいです。

若い方、学生の方には、ぜひ見てもらいたいです、僕が若いときに刺激を受けたのと同じように、この展覧会に足を運んで、目の前の原画から、刺激を受けて、自分のクリエイティブを見つけてもらいたいです。

自分の人生の方向を決めてくれる1枚に出会えるかもしれないです。

要するに日本のイラストレーションのパワーを感じてほしい、ということかなと思うのですが、バブル崩壊前の日本経済の好景気とともにあった商業イラストレーションの力は、今よりももっと熱量を持っていたのかもしれないですね。

当時のこと知らないので何とも言えないですが、その世代のイラストレーション好きにとっては堪らない展示だったのではないでしょうか。世代こそ違いますが、私も展示内容を楽しめました。

 

寺田克也さんの作品

キャンバス画

イラストレーションウェーブvol.1 2018 寺田克也さんの出品作1

こちらは、阪急うめだギャラリー(大阪市)で2018年9月に開かれた「コンテンポラリー・シック 50人が描くファッション・イラストレーションの最前線」にて展示されたものですね。東京での展示は今回が初でした。

 

壁画(デジタル・プリント)

イラストレーションウェーブvol.1 2018 寺田克也さんの出品作2

天井まで届く大きな絵がどーん!と展示されてました。寺田克也さん以外にも宇野亜喜良さんなど何名かの絵がどどんと大きく展示されおり、大量のイラストレーションに囲まれる迫力がありました。

会場に寺田さんご本人がいらっしゃったので聞いてみたところ、主催側が大きい絵を展示したかったので大きい絵を持ってる人がいないか参加作家に聞いていて、たまたま寺田さんが持っていたから出しただけ、だそうです。

しかし他の展示作品と面白いほど馴染んでいてすごい…。

 

イラストレーションとは

このイラストレーションの波に埋もれたところで、そもそも「イラストレーション」って何なのよ?という疑問が沸いてきたので、個人的に思ったことをまとめてみます。あんまり推敲してないので変な文章になりそうですが、突っ込みどころがあったらご教示ください。

 

イラストレーションが意味するもの

辞書的な意味では、マスメディアを通じて社会の中で機能することを大前提としており、グラフィックデザインの中の分野でもある。というもののようですが(wikiより引用)、単にそれだけのものには留まっていない気がします。

因みに今回の展示ではいわゆるアニメ的な絵、萌え絵、漫画・ゲームのジャンルの絵は選ばれていなかったようです。確かに表現としての出自が全く違う感じがしていて、なんといえばいいのか分かりませんが、絵のための絵なのか、フィクションのキャラクターとしての絵なのか、みたいな違いが何となくあるような。

しかし、ストーリーを持たないキャラクター絵もまた存在するでしょうから、明確な線引きは本来できるようなものではないのかなと思います。まぁ、とにかくそういうアニメ的・キャラクター的なものとは違うジャンルのものが大量に集められていることが今回のポイントですよ。(決してそこの表現に上下を付ける意図はないです)

 

イラストレーションの歴史

「スーパーリアル」と「ヘタうま」

1970年代後半、「スーパーリアル」と呼ばれる波がイラストレーション業界を席巻していたようですが、1980年頃に「ヘタうま」ブームが起きたそうな。

その界隈で代表的なのは湯村輝彦さんや日比野克彦さん。因みに、ヒロ杉山さんも湯村さんに絵を学んだそうです。(ヒロ杉山さんのインタビュー記事がありました)

「ヘタうま」とは「一見ヘタなようで実はうまい」という意味のようですが、パルコ出版『ビックリハウス』、玄光社『イラストレーション』などの誌上でそうした「ヘタウマ」作家たちが活躍したそうな。

(参考)ヘタうまと日本グラフィック展 Outside: Heta-Uma and Nippon Graphic Exhibition

 

パルコ「日本グラフィック展」

そして1980年9月にパルコ主催の第一回「日本グラフィック展」が開催。

ここからは半ば推測だけで筆を進めますが、画壇と呼ばれるような伝統的な美術体系と、新しい表現を模索する現代美術の人たちという構図が既にあって、そこにパルコが牽引したようなイラストレーションに心酔する人たちが、サードウェーブ(第三の波)的に増加した時期だったんだろうなと思います。

寺田克也さんもかつては、グラフィック展に燃えた人間だったそうな。

 

パルコ(PARCO)の広告

文化の発展は経済や地理と密接にかかわっているということを改めて認識しました。

パルコが頭角を現すのは渋谷進出からだといわれる。1960年代以降、セゾン系は拠点を渋谷に求めた。だが、当時の繁華街といえば新宿・銀座であり、異質な文化を求める若者は六本木に集まった。渋谷は坂に囲まれた複雑な地形にあり、当時としては商業集積地に適さないと予想され、渋谷進出を危惧する声は根強かった。そうした予測に反し、パルコは若者カルチャーやアートとクロスオーバーさせた斬新な展開で挑み、それは大きな反響を呼ぶことになる。またセゾングループ時代の斬新なテレビ広告はしばしば話題になった。

>wikipediaのパルコの項目より

そしてパルコは単なる商業施設という立場に留まらず、文化振興の旗振り役となり、人々を元気づけるクリエイティブを生み続けたそうですよ。

1970年代の幕開けとともに登場し、一商業施設を超えて社会現象となったPARCO。山口はるみは、イラストレーターとしてその立ち上げ当初から広告制作に携わり、一躍時の人となりました。彼女が描いた女性たち=Harumi Galsは、PARCOの宣伝戦略と絡み合いながら、新しい生き方を志向する当時の女性たちを大いに元気づけたのです。

HARUMI YAMAGUCHI×YOSHIROTTEN Harumi’s Summer | ギンザ・グラフィック・ギャラリー

 

まとめ

そして、これからのイラストレーションの波はどうなっていくのでしょうか。この「イラストレーションウェーブ」では、新進気鋭の若手作家!みたいな人の割合は少なかったように思います。ヒロ杉山さんも、そういう人たちにはVol.2で登場してもらいたいと発言していますが、第二弾が楽しみです。

「イラストレーション」が渋谷・パルコの若者カルチャーから育ったように、現代の若者カルチャーの中から第四の波が生まれているんじゃないかな?と思いますが、多層的多重的なテクノロジーや文化が絡み合っているのが現代で、その最先端を追い続けるのは容易ではありません。

探せばそこら辺を論じた本なんかもあるんでしょうが、いいのがあったら教えてください。

自分の好きなものが、これからも数多のクリエーターの手によって生み出されていくのが楽しみですよ。