「Monster Head Girl」寺田克也個展、Hidari Zingaro(中野)で開催

2021年9月4日より開催の個展「Monster Head Girl」、観てきました。

会場は中野ブロードウェイにあるギャラリー・Hidari Zingaroです。このギャラリーで寺田克也さんが個展を開くのはこれが2回目で、1回目の個展については「terra’s Black Marker 2」2015年Hidari Zingaroで寺田克也個展で紹介しているのでよかったらどうぞ。

個展「Monster Head Girl」

個展「Monster Head Girl」展示風景

  • 会期:2021年9月4日(日)~9月17日(金)
  • 営業時間:12:00~19:00
  • 会場:Hidari Zingaro(ヒダリ ジンガロ)〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ 3F

展示概要(公式サイト引用)

2021年9月、Hidari Zingaroにて寺田克也個展「Monster Head Girl」を開催いたします。
その緻密な線から生み出される作品が国内外で人気を博する寺田克也氏。6年ぶりのZingaroでの個展となる本展では、新作のペインティングだけでなく、寺田氏にとって初となる立体作品も展示いたします。
頭の中でも常に絵を描き続けているという寺田氏には、「ラクガキング」(「落書き中(-ing)より)、「ペインターの鬼」という別名も存在するほど。圧倒的な線の量をもって描かれる緻密な作品群は、日本のみならず海外にも多くのファンがついています。

寺田氏は、高校生の頃に出会ったフランスのバンド・デシネに影響を受けて線描のスタイルを身につけたといいます。自然界に本来は存在しない線を、線として描きだすことでオリジナルなイメージに形を与え、一枚の絵に描き出します。一枚の絵のみからもストーリーが紡ぎ出されるその世界観、漫画を読むかのように一枚の絵を追いかけて、ぜひご堪能ください。
また、本展では寺田氏にてとって初となるブロンズ作品も制作。線描で生み出されたキャラクターたちが立体作品となります。3Dで表現されてもなお、寺田氏の細密な線の世界を通底して感じられるような立体作品にご注目ください。
ペインティングから立体作品まで、寺田氏の線描から広がる世界を存分にご堪能いただける本展、ご高覧ください。
▼公式サイト

https://zingarokk.com/gallery/hidarizingaro/exhibition/14152/

寺田克也さんのメッセージ(公式サイト引用)

“作家からのメッセージ”

ほぼ日本のマンガはキャラクターで動く。
そのキャラクター造型が醸す世界観がストーリーを作り出し、自在のサイズで画角を切り取るコマに展開していく。
この時コマを構成する枠線は重要で、コマの繋がりに時間軸を与えマンガに時間の流れをもたらす。生まれた時間軸は物語の流れのタイミングを作り否応無く物語はどこかに向かって動かざるを得ない。そして一度始まったマンガは、未完であろうとも本質的に完結を目指す事に運命づけられている。
こういうマンガの持つ運動を一枚の絵でするという事を意識的にやりたいと思っている。オレの肩書きは「マンガ家」なので。

寺田克也

ギャラリーからのメッセージ(公式サイト引用)

“ギャラリーからのメッセージ”

寺田克也さんの新作展が超フレッシュです。
初のブロンズ立体造形作品!

この半年ほど、nomad sculptというソフトウェアを手に入れた寺田さんが面白がって次々とデータ上で立体を作っていた画像や動画がFBやInstagramにアップされていました。
それらのトレーニングが修練されて、今回、いよいよ個展用にという事で、ブロンズで仕上げちゃうと言うジャンプアップです。

このデジタルスカルプトの革命は、Macが出現した頃にデザイナーと呼べる人が、手書きのロッドリングペン使いから、コンピュータのマウス使いに変わった時のようなめちゃくちゃ大変革だと思います。

データ上で修行した脳内トレーニングをリアルな現実における、粘土を手で練り上げる自信にも繋がった模様。

寺田さんは、イラストで散々ややこしいオペレーションをデジタルでやられていましたが、まさか3Dに迄手が出るとは思いませんでした。
新しい技術と、御自身の新しいスキルとの出会いの喜びが作品に初々しい喜びを吹き込んで、とにかく躍動感あふれる作品となりました。

ぜひご覧ください。

村上隆(カイカイキキギャラリー)

 

会場風景

中野ブロードウェイ外観

オタクの街といえばアキバだ!と思っていた自分が初めて中野ブロードウェイに来たのは、前回の寺田さんの個展の時(2015)だったように思います。中野ブロードウェイは漫画、同人誌、アニメ、フィギュアやコスプレやなんやらとサブカルチャーなお店がたくさんある商業施設で、初めて来た時にはその品揃えに圧倒されました。まんだらけの本店がここにあるんですね。

余談ですが、ショッピングモールとしては珍しく店舗が分譲されているそうで、個々の店舗スペースごとにオーナーがいるそうな。大きなオーナーがテナントを決める感じではないので、そのため同じお店がこのモール内の別々の場所に店舗を持ってるみたいなことになってるみたいです。知らんけど。

 

私は個展初日の12時半頃に会場に着きましたが、5人くらいの入場待ち行列になってましたかね。10分ほど待って、検温、アルコール消毒の上で入場できました。

 

展示・モノクロドローイング

個展「Monster Head Girl」展示風景

会場一番奥にどんと展示されているこちら、女の子の頭にフランケンシュタインの怪物のようなモンスターが。女の子の左肩に”Monster Head Girl”とあるので、展示の主役と言って過言ではないでしょう。※後述のブロンズ像のあとに描かれたようです。

写真だと伝わりづらいですが会場では一番大きい絵です。モチーフはいかついですが、緻密でありながら、どことなく優しい表情をしています。

 

「フランケンヘッドガール」ブロンズ立体像・ペインティング

個展「Monster Head Girl」ブロンズ像

会場の真ん中に鎮座するのは、個展として寺田克也さんが制作したものを展示するのは初という立体作品「フランケンヘッドガール」。これもフランケン風ヘッドです。ブロンズらしいですが、これも初チャレンジのようです。高さ40cm、重さ20kg弱と、存在感があります。

こちらも表情に力みがなく安らかな印象。部分的にペイントもされています。女の子の表情は美術館なんかにある近代彫刻のような雰囲気もあり、こうして見ると公共物に落書きしているような罰当たりな感じもしなくはない。これまでの個展と比べるとやはり新鮮ですね。

後述の「造形日記」によると、台座部分はアーティストの中村哲也さん制作とのこと。竹谷隆之さんやSimon Leeさんといった造形のプロフェッショナルに知恵や作業場を借りて制作を進めたそうで、いちいち登場人物のネームバリューがすごいですね。粘土で形を作った後、それを富山の平和合金という会社に持ち込んでブロンズ像を制作、そのあと風合いを出すために加工し、ヤスリで削るということをしたそうな。(株式会社平和合金のサイトで製作工程の解説があります

 

ブロンズ像を作ったことについては寺田克也さんがtumblrで記録されているので、以下参照。

  1. ブロンズ像の造形日記その1
  2. ブロンズ像の造形日記その2
  3. ブロンズ像の造形日記その3
  4. ブロンズ像の造形日記その4
  5. ブロンズ像の造形日記その5
  6. ブロンズ像の造形日記その6
  7. ブロンズ像の造形日記その7
  8. ブロンズ像の造形日記その8

 

個展「Monster Head Girl」ペインティング

ブロンズ像と向かい合うようにして展示されているのがこちらの小さめのペインティング。フランケン風ヘッドです。ほかの絵に比べるとやや小さめのサイズ感です。ブロンズ像と同じモチーフですが、ブロンズ像のあとに描かれたようです。前歯一本だけ白いのとか、後頭部にトカゲ?の頭がついてるのも一緒ですね。絵としての表現と立体としての表現で、細部の印象が全然違って面白いです。

女の子の目力とモンスターヘッドのおぼろげな表情が対照的です。めちゃいい。

 

その他の展示物

個展「Monster Head Girl」展示風景

そのほか、こんな感じの目つきの悪い少女(かわいい)のカラー作品が何点か。

 

個展「Monster Head Girl」展示風景

モノクロのお姉さんドローイングも何点か。

全部は載せないですが、平面が20点くらいと立体が1点の展示となっておりました。因みにこのギャラリーでは絵の販売もしているのでギャラリーの方に声をかければ購入できるはずですが、全部原画ですので、多分サラリーマンの月収2,3か月分くらいは覚悟が必要かなと思います。ちょっと前にやっていたクロッキー帳のページをやぶって販売していたようなのとはちょっと趣が異なるので注意。(値段は見てないけどそれくらいするはず多分)

 

個人の感想ですが、2015年の展示と比べるとずいぶん絵が自由になったというか、「線がその位置でなければいけない」ような完璧さがなくなったような感じがします。線が曲がっていても、ちょっと違う場所にあっても、絵として成立してしまいそうというか。

勝手なことを言いますが、前回はもっと大作を描こう!としていた意気込みがあって、それが線の強さになっていた気がするのですが、今回は画面に気楽さがあるような(気楽だけど、決して手抜きではなく、前よりも線がイキイキしているような)。キャラクターの表情にもそれが反映されているのかな、などと思います。

それが、寺田さんの言っている「マンガ」らしさなのかもしれないなぁと思ったりしながらこの辺で筆を置きます。

 

緊急事態宣言も出ている中、外出しづらいご時世でございますが、ディスタンスをアレしながら会場に行くとよろしいのではないでしょうか。