概要
出版社: アスペクト
発行日:2002/1/23
形態:ペーパーバック
レビュー
寺田克也さんの代名詞的な画集『ラクガキング』。代表作は色々ありますが、この画集こそが最も寺田克也さんを語る上で重要だと、個人的には思っています。
寺田克也さんには色んな伝説があります。
絵を描き疲れて、休憩するためにまた絵を描くというエピソードが有名ですが(出典は忘れましたが)、そんな数々の伝説から生まれた呼び名こそが「ラクガキング」です。いつ頃から呼ばれるようになったのか、誰が呼び始めたのか、詳しく知らないので誰かご存知でしたら教えてください。
その呼び名を冠する、この画集。どこがどう凄いのか、紹介させていただきます。
圧倒的なボリューム感
まずこの画集、分厚いんです。
「何これ?辞典?」というのが最初の感想でした。笑
全ページ余すところなく絵!絵!絵!
合計1,000ページ、一部カラーページもありますが、基本的にはモノクロの線画です。全部じっくり読めば1日が終わってしまうことでしょう。延々と好きな絵を眺められる幸せ。私がこの画集を手にしたのは2009年のことでした…。興奮のあまり、ページをめくりながら絵を模写し続けた日々もありました。思い出深い一冊です。
「ラクガキ」づくしの画集
この画集、基本的に「ラクガキ」だけで構成されています。
寺田克也さんが所有していた膨大なスケッチ、クロッキー、デッサン、メモ書き、ラフ、下書き…そんな「ラクガキ」ばかりを集めて本にしちゃってる、一風変わった画集なんです。なんと、クロッキー帳16,000ページから厳選されているとか。凡人には遠く及ばない頂です。
寺田克也さんはよく、ご自分の作品を「ラクガキ」と呼びます。何も知らない人からすれば「絵の達人は、手を抜いても上手な絵が描けるんだな…神なんだな…」と納得しがちなところなんですが、「ラクガキ」というスタンスにはそれなりに重要な意味が込められているようで。
趣味で少しでも絵を描く人なら、誰しも共感できると思うのですが、絵を完成させる前のリラックスして描いた下書きやラフの方が、妙に味があることってありますよね。魅力的な絵は、必ずしも完成されていないのかもしれません。
『ラクガキング』は、その一番オイシイ「ラクガキ」のところばかりを1,000ページも集めた、贅沢品と言えましょう。
タイトルの由来
『ラクガキング』って、RakugakiとKingの掛け合わせだと思いがちですが、実はこれ、Rakugakiと(進行形の)ingの掛け合わせによるダブルミーニングでもあるようです。
多分、こうしている間も、絵を描き続けている。
まとめ
カラーの絵が沢山見たい人や、緻密に描き込まれた絵が見たいのなら、他の画集を買うべきでしょう。
でも絵を描くのが好きな人、絵のアイデアが欲しい人ならば、買って損のない画集です。絵を描く原初的な楽しさに立ち返られるような、そんな画集。
ただ、出版してからかなり年月も経ってるので、入手しにくくなってるかもしれないですねー。そこをなんとかゲットしましょう。そうしましょう。