2019年4月17日、寺田克也さんの画集が新発売!その名も『寺田克也原寸』!!
数えてみたのですが、他の作家さんとのコラボ画集『TOKYO SWEET GWENDOLINE』(2018/9/21)、『寺田克也+キム・ジョンギ イラスト集』(2017/3/21)や、単行本『絵を描いて生きていく方法?』(2015/10/23)などはあったものの、純粋な個人の画集としては『DRAGON GIRL & MONKEY KING』(2014/12/6)以来となります。実に4年以上の月日が経っています!
久しぶりに嬉しいニュースですね。やっと画集を入手しました。
目次
『寺田克也原寸』概要
ライブドローイングの先駆者
寺田克也の魅力を原寸で味わう!
いまや国内のみならず海外でも毎年個展を開催し、幅広い活躍を見せるイラストレーター・マンガ家寺田克也。個展用やライブドローイングで披露してきたパーソナルな絵を完全収録し、原寸サイズでも多数掲載。筆致のにじみやかすれまでも目で追える至高の一冊!
- 定価 (本体3,600円+税)
- A4判変型(302×176mm)
- 202ページ(186Pages in Color)
- ハードカバー
- 発行元 :PIE International
- >パイインターナショナル公式サイト
画集のテーマは「ドローイング」
2011年にポートランドで開かれた個展「Terra’s Black Marker」以来の、マーカーで描いたドローイング作品を収録した画集です。それも、コマーシャルワークではなくプライベートワークとして展示公開していた作品ばかりが集められています。
近年は個展活動を精力的に取り組まれていましたが、意外とそれらの絵は露出が少なかったもので、今回ようやく画集にまとまりました。滅茶苦茶嬉しい。
寺田克也さんのコメント
主に線画の大判の絵を中心に掲載してます。ライブドローイングというよりは公開制作のスタイルです。制作時間は2時間から4日間くらいの幅があります。消しゴムかけるのがめんどくさいので下描きはなしです。画材もいちいち準備するのがめんどくさいのでマーカーです。ゼブラの水性顔料系マーカー紙用マッキーを使用してます。ほとんどの絵は描きながらなにを描くか探り探り。描き上がるまでじぶんでもなに描いてるのかわかってないです。おたのしみに。
>CINRA.NETの記事より引用
「原寸」で感じる寺田克也さんの「線」
リアルサイズだと90㎝×180㎝の絵を、その16%のサイズに縮小して掲載。
一部だけ中身を紹介。「えっ、原寸じゃないやんけ…」と思ったそこのあなた、ご安心ください。トリミングして100%の原寸表示もちゃんと掲載されています。(バロン吉元さんの画集『男爵』もそんな感じでしたね)
無線綴じというのでしょうか、本のノドの部分までがばっと平らに開く仕様に作られており、見開きで大きく絵を見ることができます。本屋で画集を手にすると「思ったよりも小さいな…?」という感じがしますが、こうやって見開きで見ると、なかなか迫力があります。
背表紙はこんな感じ。タイトルが印字されていてカッコイイ。そして表紙と裏表紙の紙がやたらゴツイです。カッコイイ。
装丁は祖父江慎さん。『ラクガキング』以来のコラボ
画集『寺田克也原寸』の装丁は、祖父江慎さんの有限会社コズフィッシュが手掛けているそうな。画集『ラクガキング』も祖父江さんが手掛けています。
印刷の様子
『寺田克也 原寸』ただ今印刷中。
行けー! C80%M75%Y75%K100%インキ盛り盛りのまっ黒ー!(design with 藤井瑶) pic.twitter.com/gMkBcOorft— 祖父江 慎(そぶえ しん) (@sobsin) March 24, 2019
知らない方のためにざっくり解説させていただきます。印刷用のインクはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色あるのですが、それぞれのインクを0~100%の分量で組み合わせて乗せることで、様々な色を作り出している訳ですね。
単にKのインクだけを使うのは「スミベタ」などと呼ばれるそうです。それに対し、Kの他にCMYの色を乗せることで「リッチブラック」と呼ばれる、深みのある黒色が作り出せます。
そして4色のインクが多すぎると、インクが乾ききらずに前後のページがくっついてしまう事態になることも。この「インキ盛り盛りの真っ黒」には、そういった手間を乗り越えてでも、黒色に拘りたいというスタッフの熱意が感じられるということですね!(多分)
因みに私も昔、趣味で印刷物を作っていたのですが、このインク量のバランスを理解しておらず、印刷会社の人にご迷惑を掛けたことがあります…。『寺田克也原寸』を読む時は、黒色の深みに注目ですね。
たしか左上から、初校、再校、再校直し、三校、三校直し、仕上がり。の順。 pic.twitter.com/QIcFZjtFrK
— 祖父江 慎(そぶえ しん) (@sobsin) March 30, 2019
この写真だけ見ても何が違うのやら…現物見れば違いが分かるのでしょうか。
プロの世界ですねこういうの良いですねすごいですね。
動画で画集をチラ見しましょう
パイインターナショナルによる公式Youtube動画。
ホラ見てくださいこれ!パラパラパラっとめくるのが勿体ない!1ページずつ吟味してください!
掲載作品
以下の絵が収録されています。
- 描き下ろし(表紙絵)、2018年
- 「terra’s black marker」展(ポートランドのCompound Galleryにて)、2011年
- 「J-POP SUMMIT FESTIVAL」(サンフランシスコ紀伊国屋書店にて)、2011年
- 画集『エロ×メカ』特装版付録原画、2014年
- 「寺田克也ココ12年」展ライブドローイング(福島ガイナックスにて)、2014年
- 「SAMURAI」展(WORCESTER ART MUSEUMにて)、2015年
- 「terra’s black marker 2」(中野のHidari Zingaroにて)、2015年
- 「Return of Hot Pot Girls」(LA、GR2ギャラリーにて)、2014年
- 「四龍プロジェクト」(長崎にて)、2016年
- 「阿佐ヶ谷美術専門学校卒業・修了制作展」でのドローイング実演、2016年
- 「Giant Robot Biennale 4」(LA、Japanese American National Museumにて)、2016年
- 「Juxtapoz×Superflat」展(シアトルのPIVOT ART + CULTUREにて)、2016年
- TV番組「日曜美術館」『ダリの正体!?』でのドローイング、2016年
- 「Manga Girls」(LA、GR2ギャラリーにて)、2016年
- 「寺田器・展示即売ショー! -2017-秋」(中野、SF gallery.にて)、2017年
- 「バロン吉元 / 寺田克也 バッテラ【bateira】」展(渋谷、アツコバルーにて)、2017年
- 「誉のくまもと展」(熊本市現代美術館にて)、2017年
- 「幻獣神話展Ⅳ(遙かなる憧憬との対峙)」(有楽町、東京交通会館にて)、2017年
- 「美しい言葉展」(青山のギャラリーハウスMAYAにて)、2017年
- 「バロン吉元/寺田克也 バッテラ」展(京都、高台寺にて)、2018年
- 「寺田器・展示即売ショー!-2018-初春」(中野、SF gallery.にて)、2018年
- 「Life Drawing」(長崎、壱岐島にて)2018年
- 「テラテン 寺田克也 terra展 アナログ+デジタル ドローイング」(イタリア会館・福岡にて)、2018年
- 「コンテンポラリー・シック 50人が描くファッション・イラストレーションの最前線」(阪急うめだギャラリーにて)、2018年
- 「GR2: 15 Year Anniversary Show」(LA、GR2ギャラリーにて)、2018年
ネットラジオ インタビュー
「寺田器」シリーズで関わりのあるメチクロさんがやっているネットラジオ(という呼び方でいいのかな?)にて、『寺田克也原寸』に関連して対談形式で様々なお話が配信されていました。
以下のリンクから。
>MHzRadio Vol.5「マッキーで一発描きした画集『寺田克也 原寸』がスゴすぎる。トークゲスト:寺田克也」
トークイベント「原寸 寺田克也x祖父江慎」
新宿ロフトプラスワンにて、4月29日に画集発売記念イベントが開催されました。寺田克也さんと、装丁に関わった祖父江慎さん、そして藤井瑶さんによるトークショー!。
ゼブラ株式会社が「協力」として名前を出していますが、これは寺田さんが大型のドローイング作品を描く際にいつも使っておられる水性顔料マッキー絡みですかね。
トーク前半「絵について」
この写真はイベント後のものですが、檀上で寺田克也さんが描いたドローイング。祖父江慎さんが聞き手にまわり、寺田さんに絵のあれこれを聞いていくような流れでした。
右上にあるのは、マッキーの筆先の図を寺田さんが説明したもの。それを見た祖父江さんが「え、そこに描いちゃうの…!?」と突っ込むような、終始楽しいトークでした。
体のパーツを間違えた時は、肩はアーマーにしちゃえばいいんです!手はワッペンにしましょう!と、絵をごまかすテクニックを披露する寺田さん。一時はお絵かき講座かのような空気に。これは貴重。
因みに、約20年前にもこの会場で寺田さんはトークをされたそうで、マックを持ち込んでデジタルライブドローイングを試みたところ、10分に一度マシンが落ちるという事態に。再起動を見せる再起動ショーのようになっていた思い出があるそうです。その頃、私は小学校帰りに田んぼで蛙とか取ってましたね多分。
画集『ラクガキング』の思い出
寺田克也さんは昔から祖父江慎さんのファンだったそうで、画集『ラクガキング』の時には1000ページのラクガキを一冊の本にするというテーマで、そんな仕事をやってくれるのは祖父江さんくらいだと思ってお願いしたそうな。
寺田さんが段ボール3箱分のラクガキを持ち込んで、それに祖父江さんが1000ページ分の付箋をつけて入稿したそうです。印刷会社の人、大変だったんでしょうねえ。
絵を仕事にする人が誰しも通る道ですが、駆け出しの頃は、下書きの方が完成品よりも勢いがあって良い絵であることが往々にしてあるそうな。寺田さんが、ある編集者の方に「ラクガキはすごく良いが、それ以外は全部ダメだな」と言われ、その言葉が腑に落ちてそれ以来仕事の絵がちょっと変わったそうです。
そういうターニングポイントにあったのが『ラクガキング』だと思うんですが、たかが「ラクガキ」といえどバカにはできないというか、絵が持つライブ感というか勢いというか一発描きの緊張感というか、そういう良さが反映された絵が『ラクガキング』には収められていて、そして『寺田克也原寸』もそうした良さを持っているのだろうなと思います。
トーク後半「装丁について」
トークの後半は「装丁」について。
上の図は、初期の『寺田克也原寸』設計図。デザインを担当された藤井瑶さんも交えて、完成までの変遷を語っていただきました。
当初は画集を新聞サイズで発刊しようと考えており、タイトルも『寺田克也24%』だったそうな。色々と計算して16%になりましたが、祖父江さん曰く「それだと細密画みたいになっちゃう」とのことで、原寸大の絵も併せて掲載する今回の形に落ち着いたようです。
この記事の前半でも触れましたが、画集の黒色を再現するにあたり、CMYKのインクの配分を色々と変えて試しながら刷りを行ったそうで、その色校を会場の参加者に抽選でプレゼントしていました。当たった人が羨ましいです。
その他、裏話。画集の表紙絵は今回のために描き下ろしだったのですが、その絵を描くために用意してもらった板がバカみたいに重くて辛かったそうな。そして一度描いてみた絵が上手くいかなかったので、ジェッソで塗りつぶして再度描いたものが表紙に採用されているそうです。
そのジェッソの質感を再現するために表紙の色合いを工夫されているそうなので、画集を観る際にはその再現性にも要注目です。
寺田さんが祖父江慎さんを描いたスケッチ
トーク中に寺田さんが描いたラクガキ。うにょ~~。
その後、下半身を加筆されたものが祖父江慎さんのTwitterで公開されていました。
寺田克也さんはいつも手が動いてる。
きのう(2019.4.29)の『寺田克也原寸』トーク中にテーブルにあっという間に描かれていた私(左)と、18年半昔(2001.12月頃)『ラクガキング』の打ち合わせで知らないうちにクロッキー帳に描かれていた私(右)。
どちらも妖怪感半端なくて、お気に入り❤︎ pic.twitter.com/6Q8l4pQAFe— 祖父江 慎(そぶえ しん) (@sobsin) April 30, 2019
また、会場では特製エコバッグ付きの『寺田克也原寸』の販売も行われていました。
イベント参加者は100名少々いたのですが、寺田さんと祖父江さんのサイン会もその後行われました。サイン本、大事に保管します。余談ですが『ラクガキング』を持参してサインをお願いしたところ、ケースの内側に祖父江慎さんのサインを描いてもらいました。見えねえ!
コミックナタリーにイベントレポート掲載
ニュースサイト「コミックナタリー」にレポートが掲載されていました。
>【イベントレポート】やっぱり原寸だ!寺田克也×祖父江慎がマーカードローイング画集の魅力伝える – コミックナタリー
銀座 蔦屋書店にてサイン会
2019年5月17日(金)17:00~21:00に、銀座蔦屋書店にてサイン会も行われます。
定員100名とのことなので、かなり大規模なサイン会ですよ!
『寺田克也原寸』リンク