『ペインタボン!』デジタル作画テクニック大暴露本。【書籍レビュー】

概要

出版社:ラピュータ

発行日:2002年7月

形態:大型本

寺田克也さんの、ペインターでの作画テクニックを紹介する本。ペインターの本だから『ペインタボン!』ということですね。

どういう内容なのかは、本書のカバーにも熱く解説が載っているのでご参照ください。この熱狂的な感じ、好き。

これはただの画集じゃないんです!!!本を開けば同じ絵がズラーーーーッ!!なんじゃこらああああ?????と驚愕しながら目をこらすと、ふと気づく真実にもういっちょ、なんじゃああああこらあああああ!!!そうなんです!同じような絵が並んでいるように見えたのは、一枚の絵が出来上がっていく過程がズラーーーーッなんです!!寺田克也が、愛用のペイントソフト『Painter』(Corel)シリーズで描いて描いて描きまくるその過程を、根気強くキャプチャー!キャプチャー!打つべし!打つべし!キャプチャー!キャプチャー!下描きから完成までを追いかけて捕獲しました!うまい絵を描くことに心血を注ぐ寺田克也のインタビューもたっぷり。いわばメイキング・オブ・絵!!寺田克也の『Painter』の使い方は極めてシンプルですからして、もしあなたが『Painter』の機能を詳しく知りたいのなら、他の本を勧めしましょう。でも!!もしひたすら絵がうまくなりたいのだったら、迷わずこの本を!当代きっての絵師二人、大友克洋氏と寺田克也の対談もありますよ!!

Painter(ペインター)とは

Corel(コーレル株式会社)という企業が販売している、ペイントソフトです。

似たようなソフトは色々あるのですが、その中でもペインターは色塗りの質感・操作感に優れていると言われています。

寺田克也さんのゲーム業界でのお仕事など、厚塗り(アクリルガッシュなどの不透明水彩や油絵による、色を塗り重ねていく技法)をメインとした絵によく利用されています。

因みに最近ではProcreateというアプリをよく利用されているようですね。

本書の構成

メイキング

仕事で使った絵など、実際に寺田克也さんがペインターを使ってぐりぐりと絵を塗っていく過程を、インタビューを交えながら紹介しています。

「大猿王」や「BLOOD THE LAST VAMPIRE」などのイラストのメイキングが見れます。

例えばこちらの絵。本書のカバーを外すと現れる表紙です。SFマガジンに掲載された絵を、本書のために別のカラーで塗っていく様子を見ることができます。

このように、作業しているモニタの画面を時系列的に見ることができます。(写真は、裏表紙)

寺田克也さんのルーツ

寺田克也さんが幼少期に描いた絵や、中学〜高校時代に描いた絵も、数ページですが掲載されています。

小さい頃の絵は微笑ましいですが、中学〜高校くらいになると、絵の上手さが際立ってきます。ご本人にとっては恥ずかしい歴史なのかもしれませんが、プロの絵描きはやっぱり子供の頃から絵が上手いんですねぇ。

大友克洋さんとの対談

『AKIRA』や『童夢』で有名な大友克洋さんとの対談も載ってます。この対談を読むためだけに本書を購入しても、元が取れると思ってます。

大友克洋さんの方が大先輩という立場になるようですが『ペインタボン!』以外にも、共同で本を出したり、一緒にトークイベントに出演したりと、お二人の親交は深いのです。

塗り絵コーナー

ペインタボン!の巻末には、本書に登場した絵や、実際の仕事に使われた絵の下書きだけをまとめたコーナーがあります。

これをスキャンしてペインターを操れば、貴方も寺田克也になれる!…訳がないのですが、確かにこれは「俺も絵を描かねば!」という気にさせます。

ペインターのハウツー本としてはあまり役に立たない

冒頭でも書きましたが、この本を読んでも、ツールの使い方は大して分かりません!笑

寺田克也さんはレイヤー分けもほとんどしないので、凄い下書きに、凄い塗りが乗っていく様子をただ目撃することしかできません…。

ただし、絵を描くことについての考え方や、寺田克也さんの絵を描く手順を追って見ることができるので、道具に関わらず絵を描く人にとって参考になることは間違いありません。私もこれを読んだだけで絵が10レベルくらい上手くなった気がしたものです。気がしただけですが!!

今でこそYoutube等でプロのメイキング動画を気軽に見られるようになりましたが、本書の発売当初は今ほど手軽には見れなかったでしょうね。

横長の判型なので本棚に収めにくい画集ランキング上位の『ペインタボン!』ですが、マストバイです。ぜひぜひ。