「あうんてん」朝倉世界一・寺田克也の2人展、東福寺光明院(京都)にて開催

寒くなったり暑くなったり、訳の分からない気候が続いておりますが、そんな中、京都まで夜行バスで弾丸旅行に行ってきました。お目当ては東福寺光明院(とうふくじ こうみょういん)にて開催中の、朝倉世界一さんと寺田克也さんの2人展「あうんてん」です。

「あうんてん」概要

あうんてん

  • 会期:2023年10月7日~10月31日(午前7時頃〜日没頃 迄)
  • 拝観料:志納 300円程度
  • 会場:東福寺 光明院(臨済宗東福寺派 大本山東福寺塔頭)
    京都市東山区本町15丁目809

 

光明院で閉じたり開いたりする。
光明院の庭と向き合ってると溶ける。
あの空間と時間にじぶんが溶け出していくのだ。
2022年のしりあがり寿個展で初めて伺ってからすっかり恋をした。
縁を頂いて朝倉世界一とふたりで展示ができることになった。
阿吽をテーマにして、口を開いたり閉じたりするのだ。
空と大地が繋がっているような雰囲気であの庭は隔絶された様でもあり
抜けるように宇宙と繋がってる様でもある。
我閉じたり開いたり。
自ずと呼吸が落ち着いていくのを感じながら、 あの何処かに限りなく広がっていく
光明院の庭に思いを馳せながら絵を描いている。
と併せてfreedom dictionary で作品集を編んでもらえた。
新作も過去作も綯い交ぜで毎回愉しみながらページを構成している。
こういう連載はあるようで、 意外とないので思うままやらせて頂いて幸せだ。
茂一さんに導かれながらふわふわと進んでおります。
寺田克也
寺田克也さんコメント引用元

 

昨年から続けて寺田克也さんがイラストを掲載している、選曲歌・桑原茂一さんが手がける冊子『freedom dictionary』とのコラボレーションとなるようです。朝倉世界一さんと寺田克也さんの2人で、光明院の空間の一部として絵を展示する、そんな展覧会です。

2022年4月16日~5月15日に、しりあがり寿さんが同じく光明院で展覧会「心頭滅却すれば火もまたCOOL」を開いていたのですが、そこで光明院の雰囲気に惚れ込み、今回の企画に繋がったようです。寺田さんが京都のお寺で絵を展示するのは、2018年の「バロン吉元/寺田克也 バッテラ」展以来となりますね。

 

「あうんてん」展示の様子

あうんてん

夜行バスで早朝に京都駅に到着し、やってきました光明院。最寄り駅は鳥羽街道駅で、JR京都駅から数駅です。朝7時頃から開いているというので、夜行バス民には大層ありがたい。早朝のため人気も少なく、私以外に数名の参拝者がいるだけでした。窓口には係の方がおられず、拝観料は志納(お気持ち)で300円程度ということでした。両替できないので、現金を細かめに持っていくのを推奨します。

 

仁王像

あうんてん

入口でお出迎えするのは、朝倉さん、寺田さんの仁王。踏みつけている悪鬼羅刹が車とセットなのはどういうことなんでしょうね。交通安全祈願かな?(適当)

このように「あうんてん」では展示全体を通して、共通のモチーフに対して朝倉さんと寺田さんが「あ・うん」の呼吸で対となるように作品を展示しています。因みに今回に限らず、寺田さんが2枚で一対になる絵を描く時は、このように阿吽の形で片方が口を開け、もう片方が口を閉じていることが多かったりします。

また、見ての通りですが、寺院の空間(建築)がメインとなる展示のようで、障子の向こうの枯山水まで仁王像が導いてくれるようです。

 

あうんてん

2枚とも、こんな感じで裏まで段ボールに絵が描いてあります。寺田克也さんの仁王の後ろには炎と蓮の花と鳥。仁王の背中に炎があるのは、不動明王っぽさがありますね。仏像の後ろにある飾りは光背(こうはい)というのですが、炎の形をしたものは火焔光(かえんこう)と呼ぶそうです。

 

禅と枯山水と建築と達磨と

あうんてん 枯山水

庭園はこんな感じ。東福寺光明院は臨済宗のお寺ですが、臨済宗は禅宗の一派です。枯山水庭園も禅宗のお寺に多いようです。お寺の名前に因んで「光明」をテーマに、昭和になって作られた庭園だそうな。分からないけど、綺麗です。

 

あうんてん ○△□

建築も小窓が三角や丸に切り抜かれていたり、幾何学的だったりするのですが、この○△□(まる さんかく しかく)というのも禅の考え方に由来するみたいです。あくまで寺院建築が主であって、作品が従となるキュレーション。オシャレやんか…。

 

あうんてん 達磨

左の絵は、インドの仏僧であり禅宗の開祖である菩提達磨/達磨大師(ぼだいだるま/だるまだいし)でしょう。9年も洞窟で座禅をしていたため手足が腐ってしまった逸話があるので、手足は描かれていない訳です。右の絵は釈迦如来かな。因みにこの光明院の本尊も、同じくお釈迦様(釈迦牟尼仏/しゃかむにぶつ)です。

 

襖絵(獅子)

あうんてん 襖絵 獅子

こちらは寺田さんによる大迫力の襖絵。(実際に襖としてはめ込んである訳ではないですが)モチーフは獅子ですね。仏や、王侯貴族の座る台座が獅子座と呼ばれたくらいで、獅子も仏教と密接な存在であるわけです。この襖絵の前に鎮座して、じっくり鑑賞するという贅沢体験ができました。ドローイングの様子は寺田さんのインスタで見れます。

 

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石みたいな犬

あうんてん 石の犬

こちらの部屋には石(風の何か粘土を固めたもの?)に描かれたがたくさん置かれています。こういう石に描かれた絵というのはあまり見かけたことがないのですが、ルーツがあるんですかねえ。狛犬みたいなイメージなのかも。

 

あうんてん 石の犬

朝倉さん作の犬はこんな感じ。この作品に限らずですが、朝倉さんの作品は、尾形光琳の描いた虎や、小村雪岱の描いた犬のような素朴な味わいがあります。

 

カレー

あうんてん カレー

こちらの部屋はお茶をする空間なのですかね?こちらにはカレーを題材にした絵が。カレーもインドから伝来しているので、間違いなく仏教的モチーフであるということですね完全に理解しました。

 

龍図

あうんてん 本堂 扁額

本堂には、扁額(へんがく)のような形で鴨居の上にの絵が展示されています。ちょっとこちらの写真だと小さくて分かりづらいと思いますがご勘弁ください。この双龍図の真正面には本尊が安置されているので、少し撮影が憚られました。

 

写真は割愛しますが、その他にも花(蓮華)山(須弥山?)猫&鼠などの仏教に因んだモチーフの作品が展示されていました。猫は寺田さんのオリジナルキャラクター・ゲイリーザキャットです。

猫ってあまり仏教絵画には登場しませんが、十二支のエピソードにも「鼠が一番に駆け付け、猫は寝ていた」とされるように、動物がたくさん描かれることの多い涅槃図(ねはんず)にも猫は通常描かれないくらいマイナーな存在らしいです。(現代人の感覚からするとトム&ジェリーの方が親しみあるので、セットで描かれていると落ち着くものですが)

 

『freedom dictionary』

会場入り口では、『freedom dictionary』も1,000円で販売されています。今号から1,000円に値上がりしたみたいです。本当はこの冊子を「あうんてん」の図録の位置づけにしたかったそうですが、スケジュール的に間に合わなかったとのこと。少し残念ではありますが、表紙は寺田さんが本堂に展示していた龍の絵なので、記念に入手しておくのを推奨します!

また、展示されていた作品は襖絵を除いて購入が可能ですので、トランスポップギャラリーにお問合せを。

 

京都国立博物館の特別展「東福寺」

京都国立博物館の特別展「東福寺」

タイミングのよいことに、京都国立博物館では2023年10月7日(あうんてん開始日と一緒!)から12月3日まで、東福寺の初となる大規模展覧会「東福寺」展が開催されていました。

 

東福寺で室町時代に活躍した絵仏師・ 吉山明兆(きっさん みんちょう)の手による重要文化財「五百羅漢図」が目玉でした。この明兆は、あの雪舟にも影響を与えた偉人らしいです。

その他にも、東福寺の国宝・三門(さんもん)に設置されていた「二天王像」(これも重文)をはじめとする彫刻群も印象的でした。東福寺にかつてあった旧本尊の大仏の、手だけ焼け残ったものが「仏手」として会場に展示されていますが、こちらはフォトスポットとして写真撮影可能。

京都国立博物館の特別展「東福寺」公式サイト

 

歩くのが好きな人なら、光明院から東福寺、京博まで徒歩で全部回れるくらいの距離にそれぞれあるので、「あうんてん」を観に来る際にはこの3か所をセットで回るのがお勧めです。

 

東福寺について

最後に東福寺についてのお勉強をしておきます。東福寺は、京都を代表する禅のお寺で、臨済宗東福寺派の大本山。多くの国宝や重要文化財を有しています。東大寺と興福寺から一字ずつ取って、東福寺と名付けられたそうです。

 

東福寺 大伽藍

こちらが国宝の三門。デカすぎてカメラに収まりませんでした。奥にチラ見えしているのが本堂。お寺の建築のことを伽藍(がらん)と呼ぶそうですが、「東福寺の伽藍面(がらんづら)」と呼ばれるくらい建築が壮大なことで有名なようで、大層な迫力がありました。

 

「あうんてん」の会場となった光明院は、そんな東福寺の塔頭(たっちゅう)寺院という位置づけ。本山(ほんざん)のトップである住持(じゅうじ)や高僧が亡くなった際に、そのお墓を擁するために立てる寺院のことを塔頭(たっちゅう)と呼ぶそうです。お墓のことを「塔(とう)」とも呼ぶらしい。なるほどね~、難しすぎるわ!!!!!!

東福寺 公式サイト

光明院 公式サイト

 

記事はここまでです。随分と涼しくなったお陰で外を歩きやすくなり、お寺&博物館めぐりを存分に楽しめました。今回の記事は専門用語多めでしたが、まぁお寺ってそういうとこあるよね。いい勉強になりました。